インタビュー

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#45 仙台市内中心部に唯一残る酒蔵 森民酒造本家

2014.12.03

#45 仙台市内中心部に唯一残る酒蔵 森民酒造本家

 

仙台駅から地下鉄で二駅ほど、銘柄「森乃菊川」で知られる森民酒造本家がある荒町は譜代町(米沢で創設され、岩出山を経て仙台へと代々伊達家に従って移転してきた、由緒ある六町)のひとつ。荒町には麹の製造と販売が独占的に与えられていた。昔は味噌や濁酒を自家製造する家が多く、麹屋が繁盛したらしい。江戸末期の嘉永二年(1849年)、麹屋を買い取って酒蔵にして森民酒造本家はスタートした。

 

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「(荒町のある)若林区は水の都」とは森徳英社長の言。酒造りには大量の水を使う。森民酒造がここにある理由は地下水の豊富さにある。荒町は北と南からの水脈がぶつかるところらしい。荒町の地下水は酒造りに使う水としては硬度が高い(ミネラル分が多い)。山から荒町の低地まで水が流れてくる間にミネラル分が溶け込んでいるのではないかとのこと。ただし、2011年の東北地方太平洋沖地震以降は硬度がそれまでより少し低くなった。加えて、水そのものがきれいになったとのこと。酒造りに使われる、地下40メートルからくみ上げられる地下水を味見させていただく。水道水とは全く違う、山登りで飲む湧き水に似た味だ。また地下水の温度は約15度で一定なので、夏はひんやり冷たく、冬は逆に暖かく感じられるとのこと。

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米にももちろんこだわっている。米は極端な温度変化を嫌う。純米酒には酒造好適米の美山錦などが使われているが、宮城県内の、温度変化が小さい地域の米を厳選して使用している。

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若い世代向けに趣向を凝らした日本酒が話題になったりするが、「40~50代にアピールできる、定番の酒を造りたい」と森社長はいう。凝っていてたまにしか飲まれないものではなく、酒をじっくり飲む世代に、スローフードである日本酒を毎日でも、飽きずに続けて2杯、3杯と飲んでもらえるそんな酒造りをめざしている。

 

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森社長のこだわりは酒そのものだけではなく瓶のラベルにもおよぶ。ラベルのデザインも森社長が手掛ける。オリジナルラベルにも対応してくれるとのことなので、あなただけの1本、大切なあの人へのあなたの思いが詰まった1本ができるかもしれない。
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酒蔵は、案内できる日時が限られるが30分~1時間の時間をかけて案内してもらえる。「酒蔵ではアルコール度数20%近くまで発酵させる。自然に任せて発酵させると度数が10%もいかずに発酵が止まってしまう。これを20%程度までもっていくのがプロの技」などなど、プロフェッショナルを感じられる案内を楽しめる。

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仙台市内中心部には多くの酒蔵があったが、今はこの森民酒造本家を残すのみ。仙台市内から多くの酒蔵がなくなった(仙台市外に移転した)理由の一つは地下水の減少。仙台地域の開発の影響ではないかとのこと。森民酒造本家の井戸水は50年という年月を経てできているらしい。今のところ開発の影響は見られないが、井戸が枯れれば水のあるところに移らざるを得ないとのこと。仙台市内でうまい酒が生まれる喜び、その酒蔵を思いながらうまい酒を味わえる喜びがずっと続くことを願ってやまない。

 

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